
11月のゲストは、地元テレビ局サンテレビジョンの門前喜康(よしやす)さん。
震災がご自身の全ての目線を大きく転換させたという貴重なお話をいただきました。
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■震災直後、門前さんは?
震災当時は、サンテレビの報道現場で記者をしていました。長い報道人生の中でも、大きな出来事でした。
住まいは西神でした。「地震だ!こんなに神戸で揺れているのだから、東京が壊滅したのだ」と思いました。父も母も無事だったので、四輪駆動で6時前に家を出ました。発災直後だったので、長田近辺の煙、夢野あたりでは瓦やがれきもたくさん落ちていて、だんだんと実感していきました。停電で信号は消えていたはずなのに、クラクションの音1つしませんでした。夢みたいでした。ポートアイランドのサンテレビに向かいました。
■サンテレビは?
6時半の放送に向けて準備でした。
8時14分に放送がはじまりました。
スタジオの扉がとれ、カメラも折れていましたので、整理するのに時間がかかりました。
技術の職員がチェックをしていました。彼らが千手観音のように見えたことを覚えています。出演者は、島内に一人いたのと、OBの方の支援などもあり、大丈夫でした。
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■みんなで助け合って震災報道を続けた
技術が報道記者のようにリポートしました。中継の絵もないので、スタジオに残ったカメラで窓から外の様子を撮ったりしながら出していきました。私の手元にあった電子手帳を頼りに、「(地名)の○○さん」とお名前を書いた紙をカメラの前に置き、各地の人とアナウンサーが話をしました。各地の方に状況を伝えてもらい、点を線に、線を面に、という放送をしました。
■報道方針は?
サンテレビにも災害時の報道マニュアルはありました。しかし、自分の局が被災するというマニュアルはありませんでした。自分達が被災者。被災した建物、被災した組織。自分達が一番ほしがっている情報を放送に結び付けていこうとしました。
■安否情報も伝えた
2日目までは、安否情報もしましたが、追いつきませんでした。生活情報を伝えました。
少しすると、電子的な文字も出せるようになったので、文字と言葉で伝えていきました。
■どんな心構えでしたか?
「センセーショナルな取材はしない」これは一番はじめに決めました。自分達も被災者の痛みが分かるからですかね。会社の仲間、家族、知人、みんないろんな形で被災しているので、実感していたのだと思いますね。
■中央と地方の温度差
関西拠点のメディアとその他では、本当にいろいろとトラブルがありましたね。
長田なんかは、火事のあとの熱気がまだある頃に、どんどんカメラマンが入っていくという状況を見ました。そこは誰かのお宅であるかもしれない、もしかしたらまだ埋まっておられるかもしれないという場に入って行ったメディアに、怒鳴って、引きずり出したということもありました。
キー局や本社が中央にある在阪のテレビ局や新聞社は、すごく悩んでいましたね。私たちは、独立だったので、それはありませんでしたが。
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■当時の取材の中での苦労は?
取材はたくさんしました。けれど、最も優先すべきは生活情報でした。他社に比べて、取材したものをなかなか映像として出せませんでした。歯がゆさ、ジレンマはありましたね。
■大変な経験から学んだことは?
ボランティアというものは「何か他のことをする」と思われがちだけれど、そうではないんじゃないかと思うようになった。先生が炊き出しをするのではなく、板前さんが炊き出ししてくれたら、おいしい炊き出しになる。そのかわりに先生は、心のケアをしてくださったらいいのではないかと。
普段の仕事も、もっと社会と、一人ひとりと関わっているということを考えると、また違った放送ができるのではないかなと思うようになりました。
■川柳に応募!
自分なりに、震災を表現してみようと思いました。ちょうど川柳の募集をされまして、応募しました。今までに川柳を作ったことはありませんでした。
「冬の雲 仮設の窓に チマチョゴリ」
在日の方の取材をさせてもらった時に、部屋にすごく鮮やかなチマチョゴリがかけてあったんです。震災、被災ということを実感したのが、強烈な記憶に残っていまして、川柳を作ったものです。今も川柳を作っています。
■これから・・・
新しく入ってきた新入社員には、震災当時の映像を見せたりしています。当時のことをいろんな方法で知ってほしいなと思います。メディアは、発信し続けることだと思います。
地域でも、お祭りや催しで、「災害」というものひとつの目線で、やわらかいタッチでいいので、入られたらコミュニティが変わっていくのではないかと思いますね。
具体的に何か動いていくことで、新しいコミュニティができると思います。
新しい時代の、新しいメディアを十分に活用して、世界中に発信してもらいたいですね。発信しているということを「やってるよ」ということも伝えてほしいですね。